丸善に檸檬

置くよ

3/15 TOKYO STYLE

 読んだ本について感想めいたものを書こうと思っても、途中で読んで寝たりほうったり寝かしたりが途方もなく多いことに気づいたのでとりあえず都築響一さんの素敵な『TOKYO STYLE』について書こうと思う。さすがにブログ書いたら読書記録の癖つくんじゃないのかな。さすがに。私の手持ちはちくま文庫です。一昨日くらいにまた読みかえした本、と言う名の写真集、というか、ただの東京在住無名の人の部屋を沢山撮って説明した本。すごく好き。

 部屋の片隅に雑に寄せられたゴミ袋だとか、床が抜けちゃうんじゃないかと思えるような途方もない量の本の数々だとか、光が差して色あせたカーテンが淡く透けている様子だとか、部屋に漂うやさしさだとかエキゾチックさだとかから、きっと一生会わないであろう部屋の持ち主を勝手に想像するのはわくわくするし、夜の電車から知らないマンションの光を見つめるのに少し似てる。それから生活というものをしている人が自分の他にもこんなにたくさんいるのかと思って、今更に気づいて、ぞっとする。あたりまえだけど自分が主人公の人生を生きているので。この四百ページもの本の中に何百人もの生活や人生が詰まってるのはすごいけど、こわい。その上今も続いてるなんて。こわくないですか? でも見てしまうのは、自分の凝り固まった考えをあざ笑うような生活してたり思考回路をしてる人間が沢山いるのを知りたいし、はっとしたいし、沢山色々考えたいからだと思う。今よりもっとかろやかな思考を身につけたい。楽しく暮らしたい。それから、東京に住みたい。好きな都市だから。中央線に住もう。東京に住んで、一人暮らしをして、流れ星砕いて湯船に浮かべたい。自分の国を、城を作りたい。何が変わるわけでもないけど。でもこの本を初めて読んだ中学三年生からの夢なんだ憧れなんだ、と思って最近は並行して同じ都築さんの『賃貸宇宙』上下巻も読み返している。この人の視線と文章と考え方が好き。「百万円するスーツを着るのが、一千万円の車に乗るのが、十億円の家に住むのがわるいわけじゃない。でもそんなのはエラいダメではなくて、好みにすぎないとわかったら、人生はずっと楽になる」っていい言葉だ。

 見事東京に住むことになった暁には、宝箱めいた木箱とありったけの化粧品と特にお気に入りの本とCDとDVDとぬいぐるみとそれからひなぎくのポスターを持ってく予定です。もう心に決めてる。